適切な治療はどれか.
a 手術
b 放射線療法
c 抗癌化学療法
d 分子標的薬投与
e 化学放射線療法
第113回 医師国家試験問題キーワード【113D44】
では早速キーワードの抽出を行いましょう。
ポイントとなる箇所に赤字でマーキングしていきます。
47歳の女性.1ヵ月前からの不正性器出血と腰痛を主訴に来院した.月経周期は32日型.内診で子宮頸部から右側骨盤壁に連続する硬結を触知する.血液所見:赤血球385万,Hb 11.0g/dL,Ht 33%,白血球9,500,血小板45万.血液生化学所見:総蛋白6.8g/dL,アルブミン3.5g/dL,AST 30U/L,ALT 22U/L,尿素窒素28mg/dL,クレアチニン0.7mg/dL.腟鏡診で子宮腟部に径4cmのカリフラワー状で易出血性の腫瘤を認めた.生検で扁平上皮癌と診断された.遠隔転移を認めない.
適切な治療はどれか.
a 手術
b 放射線療法
c 抗癌化学療法
d 分子標的薬投与
e 化学放射線療法
第113回 医師国家試験問題解説【113D44】
まずは進行期分類を決定する
この問題は最後のキーワードで「扁平上皮癌」と記載されているので、どう考えても「子宮頸癌」のうち「扁平上皮癌」ですね。
ちなみにこの「カリフラワー状で易出血」という子宮頸癌の特徴も重要です。
そこで解答として要求されているのが、子宮頸癌の治療方法になるわけです。
子宮頸癌の治療方法を判断するためには問題文中のキーワードよりステージを把握する必要があります。
ところで、みなさん以下の点はおさえていますでしょうか。
ココがポイント
- 子宮体癌と卵巣癌は手術後にステージが決定する。
- 一方で、子宮頸癌は手術前にステージが決まる。
この理由は、子宮頸癌はⅡA期までは(施設によって多少の差はあれど)手術療法を行います。
一方で、欧米ではCCRT(放射線療法併用の化学療法)を行うわけです。
そのため、子宮頸癌は術前にその施設で最も偉い先生(例えば診療部長の教授や、一般病院の腫瘍専門医の部長)が内診によりステージを決定します。
少し話はそれましたが、この問題ではステージをまず決定する必要があります。
ここで子宮頸癌のステージについてまとめておきましょう。
子宮頸癌の進行病期分類(FIGO 2008)
Ⅰ期:組織学的にのみ診断できる浸潤癌
Ⅱ期:癌が子宮を超えて広がっているが、骨盤壁または膣壁下 1/3には達していないもの。
Ⅲ期:癌浸潤が骨盤壁にまで達するもので、腫瘍塊と骨盤壁との間にcancer free spaceを残さないもの。または腟壁浸潤が下1/3に到達するもの。
Ⅳ期:癌が小骨盤腔を超えて広がるか、膀胱・直腸粘膜を侵すもの。[/box]ここですでに赤字にしましたが、問題文中に「内診で子宮頸部から右側骨盤壁に連続する硬結を触知する.」とあり、また「遠隔転移を認めない」とありますので、この問題文のステージはⅢ期になります。
ちなみにⅢ期はⅢA期とⅢB期に分けることができます。違いは以下のようになります。
ここですでに赤字にしましたが、問題文中に「内診で子宮頸部から右側骨盤壁に連続する硬結を触知する.」とあり、また「遠隔転移を認めない」とありますので、この問題文のステージはⅢ期になります。
ちなみにⅢ期はⅢA期とⅢB期に分けることができます。違いは以下のようになります。
ⅢA期:腟壁浸潤は下1/3に達するが、子宮傍組織浸潤は骨盤壁にまでは達しない。
ⅢB期:子宮傍組織浸潤が骨盤壁にまで達しているもの、または明らかな水腎症や無機能腎を認めるもの。
本問では骨盤まで達しているという記載があるため、ⅢB期となりますね。
治療法を決定する
子宮頸癌の場合には、大まかに手術ができるのはⅡ期まで、Ⅲ期以上はCCRT(同時化学放射線療法)と覚えていてください。
第113回 医師国家試験問題解答【113D44】
そのため、解答は e 化学放射線療法 となります。