[box class="box1"]34歳の初妊婦 (1妊0産) .妊娠32週0日.下腹部痛と性器出血を主訴に来院した.数日前から軽度の下腹部痛があり様子をみていたが,本日朝に少量の性器出血があったため受診した.妊娠30週5日に行われた前回の妊婦健康診査までは,特に異常を指摘されていなかった.来院時の腟鏡診で淡血性の帯下を少量認めた.内診で子宮口は閉鎖していた.腹部超音波検査では胎児は頭位で形態異常はなく,推定体重は1,850g,胎盤は子宮底部に付着し,羊水指数〈AFI〉は18.0cmであった.胎児心拍数陣痛図 (図A) 及び経腟超音波像 (図B) を別に示す.
まず行うべき処置として適切なのはどれか.2つ選べ.
a 抗菌薬投与
b NSAIDs投与
c β2刺激薬投与
d 子宮頸管縫縮術
e 副腎皮質ステロイド投与[/box]
第113回 医師国家試験問題キーワード【113D64】
それではキーワード抽出をしていきましょう。
今回は画像も非常に重要になります。
[box class="box1"]34歳の初妊婦 (1妊0産) .妊娠32週0日.下腹部痛と性器出血を主訴に来院した.数日前から軽度の下腹部痛があり様子をみていたが,本日朝に少量の性器出血があったため受診した.妊娠30週5日に行われた前回の妊婦健康診査までは,特に異常を指摘されていなかった.来院時の腟鏡診で淡血性の帯下を少量認めた.内診で子宮口は閉鎖していた.腹部超音波検査では胎児は頭位で形態異常はなく,推定体重は1,850g,胎盤は子宮底部に付着し,羊水指数〈AFI〉は18.0cmであった.胎児心拍数陣痛図 (図A) 及び経腟超音波像 (図B) を別に示す.[/box]
第113回 医師国家試験問題解説【113D44】
この問題で一番重要な箇所はどこだと思いますか?
産婦人科専門医としては、まず経腟超音波の図に目がいきます。
NSTでは子宮が定期的(2分おき)に収縮しており、さらに子宮の頸管がフワっと開いている様な感じになっているのが分かります。
この子宮頸管がフワッと開いている状態のことを「funneling」と言います。
我々産婦人科医のカンファレンスや医師同士の会話でも「funnelingがあった、なかった」などの会話になることがあります。そしてこの会話をする時は、必ず「切迫早産」の時です。
ところで、問題文中のキーワードで何度か「性器出血」と「腹痛」がありましたよね。
さらにNSTでも定期的に子宮が収縮しているのが分かります。(2分おき)
※ 陣痛の定義は10分以内の子宮収縮ですので、この問題では「陣痛がきている」と言えるほど子宮収縮が強くなっている状態です。
これらの「性器出血」「腹痛」「funneling」のキーワードは「切迫症状」を示しています。
さらに、問題文中に「胎児は頭位」とありますよね。
これは、仮に陣痛が来てお産になっても経腟分娩ができるよ、ということを指しています(ただし、図を見ると胎児の頭と内子宮口の間に赤ちゃんの手がありそうですね。通常の臨床であれば超音波検査を行いカラードプラーでこれが臍帯出ないこと、または内子宮口〜児頭の間に臍帯がないことを確認します。)
さて、診断は「切迫早産」であることが分かりました。では治療としては何を行えば良いでしょうか。
引っ掛けの選択肢もありますが、一つ一つ見ていきましょう。
e 副腎皮質ステロイドは切迫早産では確かに使用しますが、基本的に「妊娠34週以下」、かつ「今後2週間以内に分娩に至りそうな場合」です。
絶対に2週間以内に分娩に至るかどうかは分かりませんが、子宮が2分おきに収縮しているのは「陣痛」の定義に当てはまります。まず肺の成熟を促すためにもステロイドは投与しておいて良いでしょう。
また子宮頸管縫縮術はこの32週の時期には行いません。通常妊娠10週台で行いますので、誤りです。
NSAIDsは下腹部痛のため入っている選択肢かもしれませんが、基本的に妊娠中、特に妊娠後期にはNSAIDsの投与は行いません。
NSAIDsの投与を行うのは肺動脈感を閉鎖させる作用があるため、でした。これは禁忌肢です。注意しましょう。
ここでa: 抗菌薬投与ですが、実臨床だと投与している病院もあります。(クリニックなどは非常に多いです)
ただ、抗菌薬を闇雲に投与するのは間違いですので、注意しましょう。エビデンスのない抗菌薬の投与は選択肢から外します。
この問題では子宮収縮抑制剤、ステロイド剤を投与するのが正解の選択肢となります。
第113回 医師国家試験問題解答【113D64】
以上より本問の解答は c, e となります。
引っ掛けの多い問題でした。
第113回医師国家試験 産婦人科分野のまとめに関する記事はこちらを参照してください。[kanren id="309"][box class="box28" title="オススメ記事"]【断言】医学生のうちにプログラミング学習を行うべき3つの理由【必須科目】[/box]