第113回医師国家試験問題【113C29】
対応として適切なのはどれか.
a 鉄剤を投与する.
b 帝王切開を行う
c biophysical profile score〈BPS〉を評価する.
d 2週間後に妊婦健康診査を受けるよう指導する.
e 経口グルコース負荷試験〈75gOGTT〉を行う.
第113回医師国家試験キーワード【113C29】
それでは早速キーワードを抽出していきましょう。
今まで自宅近くのA医院で妊婦健康診査を受けていたが,妊娠32週0日に里帰り分娩を希望して来院した.24歳時に妊娠9週で人工妊娠中絶を受けた.2日前から実家で生活を始め,分娩後2ヵ月で自宅に戻る予定だという.身長163cm.体重66kg.体温36.5℃.脈拍84/分,整.血圧134/76mmHg.子宮底長29cm,腹囲83cm.下腿浮腫を認めない.尿所見:蛋白 (±) ,糖 (±) .血液所見:赤血球380万,Hb 11.8g/dL,Ht 34%,白血球9,800,血小板16万.腹部超音波検査で,胎児は頭位で形態異常はなく,推定体重は1,800g,胎盤は子宮底部に付着し,羊水指数〈AFI〉は10.8cmである.
第113回医師国家試験解説【113C29】
この問題文中で重要なことは、妊婦の血液検査や検査所見の正常値をきちんとおさえているか、ということです。
まずは、AFI(羊水インデックス、羊水指数)とAFP(羊水ポケット、最大羊水深度)についておさえておきましょう。
AFI・AFP
- AFIの正常値:5〜25cm 5cm未満:羊水過少、25cm以上:羊水過多
- AFPの正常値:2〜8cm 2cm未満:羊水過少 8cm以上:羊水過多
その他、この問題において重要なことは母子手帳をきちんと確認することが出来るか、ということです。
ポイントとしては、血圧は正常範囲内にあるか、浮腫はないか、尿蛋白、尿糖は出ていないか、ということがあります。
この問題では1/11に一度尿糖値が + になっているものの、それほど大きな問題点はなさそうです。
引掛けの選択肢が e ですが、尿糖が + なだけでは75gOGTTは行いません。
75gOGTTを行う際は妊娠初期検査(スクリーニング)でスクリーニング項目に引っかかっているか、または中期に行うスクリーニングで50gGCT(GlucoseChallengetest )で140mg/dL以上であれば75gOGTTを行います。
※ 妊娠初期の妊娠糖尿病のスクリーニングは施設によっても異なりますが、私が勤務している大学病院では、妊娠初期に75gOGTTを行う時は例えば以下のものがあります。
- 肥満(BMI>25)
- 巨大児(4000g以上)出産の既往
- 妊娠糖尿病(もしくは耐糖能異常)の既往
- 父親、母親が糖尿病
- HbA1c(N)>5.9%
- 随時血糖値>95mg/dL
- Glycoalubumin(GA)>15.5%
以上が本問における注意点となります。
第113回 医師国家試験問題解答【113C29】
以上より正解は 「d 2週間後に妊婦健康診査を受けるよう指導する.」
となります。通常の健診通りで問題ない、ということですね。