[box class="box1"]35歳の初妊婦 (1妊0産) .初回妊婦健康診査のため妊娠11週2日に来院した.無月経を主訴に3週間前に受診し,子宮内に妊娠8週相当の胎児を認め妊娠と診断された.
初期血液検査の説明として適切なのはどれか.
a 「梅毒の検査は省略しましょう」
b 「B群レンサ球菌〈GBS〉の検査が含まれます」
c 「風疹抗体が陽性の場合は,先天性風疹症候群を発症します」
d 「C型肝炎ウイルス検査が陽性の場合,赤ちゃんにワクチンを接種します」
e 「B型肝炎ウイルス検査が陽性の場合,赤ちゃんに抗HBsヒト免疫グロブリンを投与します」[/box]
第113回 医師国家試験問題解説【113C39】
妊娠の初期検査について
本問では妊娠初期に行うべき検査項目についてきちんと把握できているか、という問題になります。
まず、妊娠がわかると産婦人科に受診します。その後大体妊娠9週〜11週を目安に受診して頂き妊娠初期検査を行います。(病院やクリニックによってまちまちではありますが、大体妊娠9週〜11週と考えて頂いて良いでしょう。)
妊娠初期検査の項目には以下のものがあります。[box class="box28" title="妊娠初期検査項目"]
- 血液型(Rh型)
- 貧血検査
- 梅毒検査
- B型肝炎検査
- C型肝炎検査
- 風疹検査
- HIV(ヒト免疫不全ウイルス)
- HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス検査)
- 不規則抗体
[/box]ここで、選択肢 a は間違いという事になります。
また、B群レンサ球菌(GBS)の検査は腟の細菌培養を採取する事で検査できます。これまでは34週あたりに採取していた施設もあるのですが、それだと分娩時の状態が分からない、という事で最近では36週頃の分娩直前に採取しているイメージがあります。
したがってGBSは妊娠初期に行う検査ではありません。
風疹について
風疹抗体価(HI抗体価)が高いからと言って、必ずしも先天性風疹症候群を発症する訳ではありません。[box class="box28" title="風疹HI抗体価について"]
- 8倍未満(陰性):感染またはワクチン摂取の既往がなく、未感染の状態
- 8〜16倍(低い):感染またはワクチン摂取の既往があっても、時間経過によって抗体価が低下している可能性がある
- 32〜168倍(正常範囲内):感染またはワクチン摂取の既往あり
- 256倍以上:現在または最近感染した可能性あり
[/box]以上の様に必ずしも風疹抗体価が高値であるからと言って、現在風疹に罹患しているかどうかは分かりません。
実際に仮に風疹抗体価が256倍以上であったとしても、再度検査を行い、抗体価をチェックし現在罹患しているのかどうかを調べます。
したがって選択肢 c は誤りです。
B型肝炎・C型肝炎ウイルス感染症
HBV(B型肝炎ウイルス)とHCV(C型肝炎ウイルス)についてまとめておきます。
HBVの母子感染は経産道感染と経胎盤感染のどちらもありますが、主に経産道感染です。胎児の免疫系は非常に未熟であるため、感染したHBVに対して無症候性のキャリアとなり、一部の感染した胎児で慢性肝炎を発症してしまいます。[box class="box29" title="point"]HBV陽性の母体から産まれた児には、出生直後に抗HBs免疫グロブリンを投与する必要があります。感染が陰性であればその後ワクチンを投与します。[/box]HCVの感染経路としては経産道感染が多いです。感染児の約3割では結集HCV-RNAが陰転化し自然消失することがあります。
HCV感染児の約半数にIFN(インターフェロン)での治療が有効となります。
第113回 医師国家試験問題解答【113C39】
したがって、解答としては e 「B型肝炎ウイルス検査が陽性の場合,赤ちゃんに抗HBsヒト免疫グロブリンを投与します」が妊娠初期に適切な説明となります。