a 血液検査
b 血液生化学検査
c 腹部超音波検査
d 上部消化管内視鏡検査
e ノンストレステスト NST
第113回 医師国家試験問題キーワード【113E33】
早速キーワード抽出をしていきましょう。
38歳の初妊婦 (1妊0産) .妊娠34週に心窩部痛および悪心を主訴に来院した.既往歴に特記すべきことはなく,これまでの妊婦健康査で異常は指摘されていなかった.胎動は自覚しており,性器出血は認められない.体温36.5℃.脈拍100/分,整.血圧140/90mmHg.心窩部に圧痛を認める.子宮は軟で圧痛を認めない.下腿に浮腫を認める.優先度の低い検査はどれか.
第113回 医師国家試験問題解説【113E33】
この問題は非常に良問と言えます。
理由は「優先度の低い」検査を問われており、決して「間違った選択肢を選べ」という内容ではないからです。
早速キーワードに注目していきます。
「妊娠34週」とのことですので、そろそろ正期産の時期に近づいてきていますね。
主訴は「心窩部痛」と「悪心」です。ここで、産婦人科医としては以下のことを頭に想定しつつ対応していきます。
ココがポイント
- 胎盤早期剥離の初期症状じゃないだろうか。 →血圧は大丈夫だろうか。
- 赤ちゃんが大きくなるにつれて子宮が胃を圧迫する事で認められる「後期悪阻」ではないか。
- そもそも妊娠とは関係なく、「悪阻」「心窩部痛」に関連する消化器疾患ではないか。
当直してくると、「〜な方が今から来院されます。」などと看護師さんから言われます。
その時点でこの様なことを頭に巡らせながら、患者さんが来るのを待っているわけです。
最悪なケースを頭に常においているので、あえて最初に「早剥大丈夫かな」と考えたわけです。
① ですが、血圧は「140/90」と少し高そうですね。
一応妊娠高血圧症候群(HDP: Hypertensive Disorders of Pregnancy )の定義には入っています。
しかし、痛みが原因で血圧が高くなるなぁとも思いたくなりますが、別の箇所に「下肢に浮腫が見られる」とあります。
やはりHDPの可能性は少し考えないといけませんね。血液検査、血液生化学検査は念の為行なっておいても良いでしょう。
しかしその前に赤ちゃんが元気かどうかBPSで評価をする必要があります。
そのため、経腹超音波は行いたいところです。その流れで血液検査 + 血液生化学検査、NSTを行なって良いでしょう。
では、上部消化管内視鏡検査はどうでしょうか。
これは現時点では必要なさそうですよね。まず行うべき検査ではありません。
しかし、それまでに検査した項目が全て問題ない場合には消化器系の疾患も鑑別に挙げる必要があります。
私が経験した事がある疾患で、妊娠中にスキルス胃癌にかかられた方がいました。
妊娠初期の悪阻で入院されたのですが、一向に吐気がよくならなかったんです。念の為、内科の先生にお願いして検査を行なってみると、スキルス胃癌でした。
年齢的にも、この問題の方も38歳ですし、有り得ない年齢ではありません。「38歳」をキーワードに含めたのもその理由からです。
この問題が良問である理由は、優先順位は低いが、実臨床では鑑別疾患の一つとして消化器系の疾患も考慮しておかなければならない。
というメッセージを含んでいるためです。
第113回 医師国家試験問題解答【113E33】
以上より解答は「d 上部消化管内視鏡検査」となります。
しかし、鑑別疾患として非常に重要ですので、実臨床の際には覚えておきましょう。